協力隊派遣中に起きたパキスタン大震災!試行錯誤の災害リハ支援!
パキスタンに派遣されていた理学療法士の林です。10年前、パキスタンに協力隊として派遣されていときに、予想だにしない大地震に遭遇しました。わざわざパキスタンに来てまで震災を経験するとは思ってもいませんでした。
それでもリハビリ職として、また協力隊として派遣された以上、何かしらの貢献をしたいという思いに駆られました。
現在は熊本県を拠点に災害リハビリテーションの活動に関わっています。10年以上もこの分野に身を置いているのは、パキスタンでの災害支援の経験が原点にあります。
今日は2005年10月8日に発生したパキスタン北部のカシミール地震(M7.6)でのリハビリテーション支援の試行錯誤した経験を中心に、災害時のリハビリテーション支援について書いていきます。
そもそも災害とは何なのか?
定義:災害対策基本法から
「災害」を「暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波、噴火その他の異常な自然現象または大規模な火事もしくは爆発その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する政令で定める原因により生ずる被害」
と定義されています。(災害対策基本法2条第1号)。
このような自然災害は場所を選ばず発生します。先進国だろうが、途上国だろうが、田舎だろうがどこでも可能性があるのです。
特に備えや支援体制の整っていない開発途上国や国内の過疎地域においては、
災害による被害は大きく、更には支援開始までに多くの時間がかかることも珍しくありません。
災害リハの概要
災害リハは、被災地状況変化にて、ステージ別に
「第1期:初動対応期」
「第2期:ライフラインの復旧までの被災地応急対応期」
「第3期:本格的復旧・復興始動期」
「第4期:生活支援期」
とフェーズ分類されています。
私は今回パキスタンで、第1期~第4期まで長く関わることができました。
被災地の文化的特徴
震災の起きたパキスタン北部はアフガニスタンと同じパシュトー人が多く住んでいます。
彼らの部族社会の掟と、イスラム教の戒律が人々の生活に色濃く反映され、
女性の多くは家の外に出ることが少ない状況でした。
いわば、ほとんどの時間を家の中で過ごしており、今回の地震では女性の被害が多くみられました。
図1 震災前のパキスタンの街
図2 震災後のパキスタンの写真
第1期、2期の活動
私は地震発生後、首都イスラマバードの、国立医科学研究所こども病院でボランティア活動を実施しました。
まず、病院のPTアシスタントと地震被災児童のベッドを周りました。
この時はまだ応急処置状態の子供や、診断や状態が正確に把握されていない子供が多かったです。
図3 怪我をした子供
主に実施したのは以下の3つのことです。
□ 包帯の巻き方やポジショニング、
□ ベッド周囲の清潔保持、
□ 生活指導
にあたりました。
理学療法士としての治療的なことは挙げていませんが、それよりも優先されることが多かったです。
災害直後の第1期や第2期においては、
療法士としての災害時特有の専門的な働きかけよりも、
まず、相手と自分の身を守るべき公衆衛生の知識が必須であると痛感させられました。
図4 病院内の巡回活動
第3期の活動
その後は、被災地のNGOで引き続きボランティア活動を続けました。
具体的内容は、
□ リハチームにて直接的なリハの実施、
□ 現地スタッフへの指導、
□ メディカルキャンプ地への訪問調査等
でした。
図5 メディカカルキャンプでのリハの実施
宗教上の理由から、
女性は男性に触れたり、触れられることを避けていたため(医師、医療職等は除外)、
女性PTアシスタントは男性病棟には近づけず、
女性・子供のみしか実施できませんでした。
図6 宗教上の理由
被災から1年経過後には
□ 病院の入院患者の激減、
□ キャンプ地の閉鎖、
□ 重症度の高い患者の都市部への移動、
□ 国際NGOの撤退
がありました。
このあたりで医療支援活動が終了となりました。
第4期の活動
その後は現地障害当事者NGOの地域支援事業の、
障害者自立支援活動に携わりました。
この時キーパーソンとなったのは、震災で脊損になった女性メンバーでした。
図7 女性の活動
彼女らと、被災地域に住む障害者の自立生活支援活動への協力、助言を行いました。
主な内容は以下の通りです。
□ 障害者へのトレーニング、
□ ピア・カウンセリング、
□ 介助者養成、
□ 車いす等の必要物品の配布
まとめ
医療分野の震災支援においては、元々国内の医療が資源が不足していたことから、海外からの緊急援助が中心でした。
そのため、外傷や被災地にいる障害者への緊急支援活動(被災外傷者、障害者への医療リハ、リハ物品の配布など)がまず行われました。
その後、被災者(障害者)権利向上に関する活動が、首都の中心部から、より遠隔地域へ広がるように展開されてきました。
この経験から、
□ 災害時におけるリハビリテーション支援の早期からの必要性
□ 地域や文化を超えて住民に対しての生活支援の視点の重要性
を感じました。
これは災害時でなくとも、私たちのリハビリテーション支援に必要な視点とあまり変わらないということに気付きました。
しかし、災害時には、公衆衛生や救急対応、生活・地域リハ(CBRを含む)のすべての知識と視野の広さを持ち合わせる必要がある、ということも同時に痛感しました。
医療法人社団坂梨会 阿蘇温泉病院 リハビリテーション科所属 理学療法士 林 寿恵
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