小野PTによるベトナムの福祉事情紹介

Xin chào các bạn! (シンチャオ、カッバン!) こんにちは。ベトナムから理学療法士の小野がお届けいたします。

はじめに、私が住んでいるベトナムのダナン市を紹介いたします。ダナン市はベトナム中部に位置する人口89万人の都市で、最近ではベトナム国内の中でダントツトップの経済成長率を誇っています。特徴的なのは、エメラルドグリーンのミーケービーチ、町全体を見渡せるソンチャー半島、そして市の中心を流れるハン川とそこに架かる数か所の大きな橋です。この都市では、他の都市に比べて道路の整備が進んでおり、清掃も行き届いています。

私が活動しているダナン市リハビリテーション療養病院は、およそ80床のベッドをもつリハビリテーション特化型病院です。日本でいうところの回復期にあたる施設といえます。私が配属されてから半年後の2013年3月に、敷地内の新病院がオープンしました。それまで旧棟にはほとんどなかった手すりが取り付けられ、エレベータが設置されました。当院は私が所属するリハビリテーション・東洋医学科の他に、脊髄損傷科があるため、元々車いす用のスロープは数か所に設置されていました。

ベトナムにおいても、バリアフリーの概念はまだまだ遅れています。ただ、私は必ずしも今の当院を取り巻く環境が悪いとは思っておりません。日本の某社会福祉法人が考案した施設作りで話題となった「バリア・アリー」という造語を知らない方は少ないかと思います。まさにそれがベトナムには当てはまります。病院の中で言えば、身体に麻痺のある患者さんでもどんどん階段を上り下りしますし、他人の手を借りて段差を乗り越えます。バイクに乗車できなくなってしまった患者さんは、およそ3万円をかけて改造した3輪バイクに乗って一人で外来に通われます。

町に出てみれば、一般の高齢者が市内バスの乗車に果敢にトライしますし、手漕ぎ3輪車で車道を移動しながら、商売まで行う障害者の方々を頻繁に見かけます。車いすに限って言うと、ユーザーの方にとっては利用しにくいと思います。バリアフリーと言える環境はダナン国際空港くらいでしょうか。しかし、適切な車いすがユーザーに供給されることがまだ難しいこの国では、環境面のバリアフリーがなかなか整備されていかないのも当然と言えそうです。

前述のように、ベトナムの障害者の方々は助け合いながら必死に生活を送っています。一方日本ではどうでしょうか。家の外に出なくても買い物ができる、リハビリスタッフが自宅に来てくれる、食事も配達してもらえるなど、とても便利な日本ですが、どこか疑問を感じざるを得ません。バリアフリー、安全第一と叫ばれ過ぎてしまって、かえって障害者(または高齢者)を自宅に閉じ込めてしまっているような気もします。

この国ベトナムで特に感じるのは、家族、近所の人々が助け合って障害者を支えているということです。バリアフリーやユニバーサルデザイン等のインフラについて語りだすと、当然日本をはじめとする先進国には見劣りします。ですが、私は、この国にこそ逆に日本社会が参考にすべき「バリアをクリアする工夫」や「人と人との助け合い」が存在していると思うのです。日本でも一昔前までは、隣近所が共同体として密接に関わって生きていましたし、子供は複数の大人に見守られていました。

ベトナム社会はたしかに日本よりも不便ですし、危険もたくさんあります。そこで助け合って強く生きている人々を見ると、日本はすべてが病院(または行政)任せではないか?とも考えてしまいます。障害者のためにバリアをなくそう、とか声高らかに叫ぶほど、障害者が障害者たることを位置づけてしまいます。就職に関しても、障害の程度こそあれ、健常者と同じような就職枠を設けられる会社はほとんどないわけです。

家族、近所、そして地域が自立し、子供や高齢者、及び障害者をサポートするシステムが、今後の日本にとっても必要ではないかと思うのです。それは決して新しい制度を作ることだけではなく、以前の日本にあった人と人との絆を再認識するという取組みも必要なのかもしれません。日本とベトナム。相互に学ぶべき福祉事情はあると思います。

最後に、歩行困難ながらも毎日外来に通院されている患者さんの印象的な写真を添付いたします。では今日はこの辺で失礼いたします。

またお会いしましょう。Hẹn gặp lại các bạn.!

第3回 ベトナム 小野さん第3回ベトナム小野さん④

第3回ベトナム小野さん③

第3回ベトナム小野さん②

 

 

 

 

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