PT,OT,STによる国際協力における支援の成果の表し方

今回はPT、OT、STのJICAボランティアが2年間の活動の成果をどのように表していくか?ということをテーマに書いていきたいと思います。

1 そもそも活動の成果とは?

2年間のボランティア活動のそもそもの成果とは一体なんなのでしょうか?実際に2年間活動してみて、終わってみると、正直何も残せなかったのでは…?と思うことも多々あります。また逆に一見残せたように思えても、本質的な部分を突き詰めていくとそれが意味あることなのか?と悩むこともあります。

青年海外協力隊の目的についてはJICAは以下のように定めています。

(1)開発途上国の経済・社会の発展、復興への寄与

(2)友好親善・相互理解の深化

(3)国際的視野の涵養とボランティア経験の社会還元です。

出展 JICAボランティア事業概要

これはJICAボランティア全体の目的であるため、PTやOT、STなどのリハ職に特化した物ではありません。教育系、インフラ系、コミュニティ開発など、ボランティアの職種はたくさんあります。

逆にいうと、様々な職種の切り口からこの3つを実現していくことがボランティアとして重要という事になります。

ただこの3つの目的は非常に大きな枠組みですので、なかなか目に見える形で成果として表すことが難しいことがあります。

開発途上国の経済、社会の発展などに本当に貢献しているか?というと、1人のボランティアという単位で考えると少しイメージがつかないのですが、50年以上の歴史の中でこれまでのべ40000人のボランティアが派遣され、草の根で様々な活動を行ってきた中で実現されてきた、と考えると少しイメージが湧きます。

そのため、1人1人のボランティアはこの大枠を意識しつつ、この方向性に沿った、自分のできる範囲の目標を設定する必要があります。

では次に、PT、OT、STに特化した目標設定や成果について考えてみたいと思います。

2、PT、OT、STの活動の目標設定とは?

開発途上国で活動するいうイメージは、何かを教える事だったり、何かを作ること事だったり、現地の専門職などを中心に伝えるという事が考えられると思います。

しかし現実的には専門職がいない場合なども多く、必ずしもそれが達成できない活動もあります。

この辺りのマッチングはボランティア自体に責任はなく、JICAの各国の事務所の方針によるものなので、ここでは言及しません。

そういったケースではマンパワーとして活動することになるのですが、これだけでも十分に意味があります。むしろ、最も分かりやすく、成果が期待できる活動は1対1の関わりにあると思います。

基本的に現場の真のニーズは1対1の関わりから分かる場合が多いです。

例えば、ある国の村の脳卒中患者の方が具体的にどのような生活を送っているのか?

ということは、実際に患者を診る事で、また話を聞くことでイメージが湧くことが多いです。

もしプロジェクトでこの村の脳卒中患者の生活を改善するというものがあったとしても、これがトップダウンの視点で行われたらまず失敗するでしょう。

そもそもプロジェクト自体が現場のニーズから始まるものでなければ本来は意味がありません。

マンパワーで活動しているとこの現場のニーズがよく分かるようになります。しかし注意点があります。

3、患者記録と統計の重要性

それは、患者の統計を必ずとるということです。

開発途上国では信頼できる医療統計が少ない場合がほとんです。この原因は患者の評価や診療記録などの記録が書かれていないことが多いです。

記録がないとあとで振り返れません。

ですのでボランティアは、必ず自分が診た患者の記録をとっておく必要があります。難しい内容である必要はありません。

むしろ、現地の方が分かる内容でなければいけないので、一般的な評価用紙に記載するもので十分です。

① 基礎情報:名前、性別、年齢、職業、住所、住居、職業など。年齢や職業などから分かることも多いです。

② 医学情報:現病歴(発症日、入院日、リハ開始日、リハ終了日、退院日など)、既往歴、治療歴、リハ歴など。発症日などは特定できない場合もありますが、日付については分かる範囲で具体的に書いておくよ良いです。

③ 専門的評価:疾患に応じて選択。ADLはBarthel indexが現地の方でも理解しやすくおすすめです。

④ 目標設定、治療・練習プログラム:単純な内容が分かりやすいです。

また、診療記録についても書くようにしていきましょう。

4、記録を書いた後どうするのか?

そして記録についてはただ書いて終わりではいけません。必ずエクセルなどに患者台帳を作り、データを管理しましょう。

後で、患者の傾向などを調べるときに非常に役立ちます。絶対にやることをお勧めします。1人の患者のデータをコツコツ積み上げることで、2年間でそれなりのデータになります。

2年間、関わる患者のデータを取りつづけたらもう立派なデータベースです。データベース自体にも意味がありますが、このデータを使って調査をすることができます。結構いろいろなことが分かります。

例えば、

季節ごとの傾向であったり、

年齢や職業と疾患の傾向であったり、

入院からリハ開始までの日数だったり、

実際のリハの介入日数だったり、

性別とリハ受益の関係性だったり、

配属先の2年間でのリハ実施患者総計の変化だったり、

配属先の2年間でのリハ介日数の総計だったり、

配属先の2年間で自分が診た患者の数だったり、

もっともっとたくさんいろいろありますが、ようするに、このような統計をとることで具体的な問題点や成果を表すことが可能になるのです。

そして統計から分析した結果を配属先なり、JICAなり、また日本の学会などで報告することで十分に役割を果たしていることになります。

この統計と言うのは、合計や平均などが分かれば十分です。

5 活動の成果のまとめ

今回は活動の成果、主にマンパワーとしての活動が中心になる場合についてまとめてみました。CBRなどはまた指標が異なりますが、いずれにしても患者記録の統計から客観的な指標を示すという事が最も分かりやすく、重要な意味合いを持ちます。

配属されて最初の1ヶ月は患者が10人しか来なかったのに、ボランティアの評判が口コミで拡がり2年後には毎日20人以上来るようになった。これはシンプルに分かりやすい成果です。

また、2年の活動の中で、配属先における季節ごとの患者動態などを調査することも、それは現地の長期ボランティアにしかできない分析で有益な情報になります。その調査からプロジェクトが生まれるかもしれません。

自分のできる範囲でデータをとって、データベースをエクセルで構築するおくことをお勧めします。

何回も言いますが、データは後からはとれません。

ここまで客観的に分かりやすい指標について中心にまとめてきましたが、実際の活動においては数値化しづらい部分での成果と言うものも大きくなります。いわゆる人と人の関わり合いの中で生まれる質的なものです。

最後になりますが、国際協力において本当に意味のある成果というのは、考えれば考えるほど、また見る視点で変わっていくものなので、本当に難しいものです。

この辺りはまた別の機会にまとめてみます。

執筆者:小泉 裕一 理学療法士

リハレポ運営代表。青年海外協力隊員として2012年6月~2014年6月までモンゴルに派遣されていた。帰国後は講演会や国際リハ関係の様々な企画を手掛けている。

 

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