シリア難民の支援をする青年海外協力隊作業療法士!

青年海外協力隊としてヨルダンに派遣されている作業療法士今さん。ヨルダンに避難しているシリア難民への支援についてお届けします。

السلام عليكم (アッサラーム アライクム) こんにちは。ヨルダンから、作業療法士の今麻里絵がお届けいたします。

今日は、ヨルダンに在住しているシリア難民について書こうと思います。ご存知の通り、シリアでは終わりの見えない内戦が続き、悲しいニュースばかりが耳に入ってきます。祖国を離れた多くの難民が、ここヨルダンでの生活を選択しています。難民キャンプで生活する家族、働き手だけ外国へ出稼ぎに行き、ばらばらに暮らしている家族、シリア国内で近親者を亡くし、お金も家も全てを失って親戚を頼ってヨルダンに来ている家族、難民キャンプの生活が合わずに、ヨルダン内の家賃の安い場所に引っ越してきた家族、その背景は様々です。

私は、縁あってシリア人の戦争負傷者の家に時折家庭訪問をさせて頂いています。難民認定を受けた方は、ヨルダンで職に就くことが禁じられています。難民キャンプの方が国連の支援により生活が保障されているのでは、と思う方もいるかもしれませんが、テントでの寒さに耐えられないことや、ストレスによる暴力、衛生状態の悪さなど、様々な理由でキャンプを離れる方も沢山いる現状なのです。私が時折訪問しているのは、そういった難民キャンプ外のホストコミュニティーで生活している方々です。

何度目かの訪問で信頼関係が出来てくると、彼らはほろっと、今までの辛かったことなどを、感情を抑えながら話してくれることがあります。緑や水源、自然が沢山あって豊かな暮らしをしていた頃のシリアでの思い出から、情勢が一変して、今まであった物全てを一気に失ったことまで。私は、シリアに行ったことはありませんが、彼らが大事にしてきた物、人、風景、その多くを失う悲しみは計り知れません。今は全く先の見えないこの状況が少しでも早く好転することを、ただ祈るばかりです。

そういった背景もあり、現在の活動とは全く関係がないのですが、私を必要としている人がいる限り、医療従事者である私は引き受けることにしました。それが私に出来そうなことであれば、こんなにボランティア冥利に尽きることはないのです。

福祉用具という言葉を知っているでしょうか?障がいによって今まで出来ていたことが出来なくなったり、今まで以上に労力を要するようになったり。福祉用具はそういった方々の「出来なくなったこと」を可能にする、労力を減らす、そんな便利アイテムなのです。

私が現在関わっているシリア人の方に、銃弾が脊髄に当たり、下半身の完全麻痺と、手の指が全く動かなくなってしまった20代の方(Aさん)がいます。Aさんと出会った当初、彼も彼の家族も、福祉用具について全く知りませんでした。

私が日本にいた時は、その方その方に適切であろう福祉用具を、作業療法士や理学療法士が数ある種類の中から選び、評価し、レンタルし、実際に使えそうであれば購入するというシステムがありました。しかしここヨルダンでは、日本にあるような福祉用具がずらりと選べるパンフレットも少なく、あったとしても購入は海外からの輸入になってしまうそうで、手元に届くまでには時間もお金ももの凄くかかります。

ヨルダンでは、車いすや歩行器、杖など、「移動」に関わる福祉用具は大きな薬局や福祉用具専門のお店では良く見かけますが、その他の「食事」や「移乗」、「整容」等の日常生活動作(ADL)に関わる福祉用具は見たことがありません。

そんな背景があり、私はいっそのこと手作りで便利グッズを作って提供してしまおうと思いました。まずはAさんの日常生活の中で改善できそうなことと、「食事はいつも介助されている。自分で食べてみたい。」というAさんのニーズから、食事に焦点を当てました。指の動かないAさんのために、ヨルダン在住の日本人デザイナーの知り合いに「カフ」と言う食事サポート自助具の作成協力を依頼しました。掌にベルトを巻き、ポケットを付けてスプーンやフォークを入れて食事や歯磨きを可能にする画期的な道具です。更に、私の活動先に陶芸部門があるため、ヨルダン人の同僚に自助食器の作成依頼をしました。片方の淵が低くなっており、もう片方の淵はカーブが付いているので、ご飯がこぼれ落ちるのを防ぐことができる便利グッズです。作成に当たり、何度か試作品をAさんの所に持っていき、実際に使ってみて頂いて、改善点等を聞き、陶芸家の同僚と相談しながら作成し直しました。Aさんには現在、改良版のお皿を使用していただいています。

それからしばらく経った時、Aさんからこんな言葉を頂きました。

「2年半、今までずっと介助が必要だったけど、この道具のお蔭で初めて自分で食べられるようになった。」

素直に嬉しかったです。更にもっと嬉しかったことは、

「自分で飲めるカップを作ってくれないだろうか。」と、

自分のしたいこと、希望を私に伝えてきて下さったことです。諦めていたことを再度やってみたいというその意識の変化は、患者さんに元気になってもらうことを仕事とする作業療法士の私にとって、非常に嬉しい出来事でした。現在試作品を改良段階です。

帰国までの私に残された時間はもう僅かです。今は自助具や福祉用具のサンプル作成をし、そのサンプルをある施設に置いていただき、患者さんとセラピストが自由に使うことができる環境が出来たらなと思っています。私がヨルダンを去った後も、ヨルダンに在住するデザイナーさん、ヨルダン人の陶芸家に継続して協力してもらえるように頼んでいます。また最近、新たな協力隊作業療法士がヨルダンに赴任したため、彼にもこのプロジェクトをサポートしてもらえると、思い残すことはないかな、と思っています。

それでは今日はこの辺で。さようなら。مع السلامة.(マーッサラーマ)

試作品自助皿とカフ 改良版自助皿、マグ、アラビックコーヒーカップ

 

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