エルサルバドルで“子供達”を支援する理学療法士

オーラーコモエスタ?(スペイン語で元気ですか?の意味です。)        

こんにちは。元気ですか?エルサルバドルから理学療法士勝股がお送りいたします。

配属先について

エルサルバドルは中南米の日本ともいわれるくらい勤勉な人たちが多く、日本の四国程の大きさで人口は千葉県の人口と同じくらいの小さな国です。

私の配属先は首都にある国立障害者リハビリテーション機構の施設の一つで、無料で0歳から18歳までの障害児へ外来リハを提供している青少年総合リハビリテーションセンターです。年間約2000人程(実人数)の利用者が来院し、外来リハに通っています。

配属先は小児のリハビリに特化しており、専門職種も理学療法士、作業療法士、言語聴覚士に当たる職種、特別支援教諭に当たる職種、心理士、ソーシャルワーカーが勤務しています。このような小児リハを提供している国立の施設は、国内に東部・中心部・西部と3つあり、その中で私の配属先は中心部で首都にあります。

首都内は、一見途上国を感じさせないほどの住宅街が見られる一方で、場所が変わればトタンで敷き詰められた家々が並ぶ貧困地域もみられます。

このように貧富の差が非常に激しく、貧困地域には、エルサルバドルのギャングと言われる人たちが住んでおり治安も悪く、本当に支援の必要な地域に十分な助けが行き届きにくい状況です。

独立記念日に行われた首都サンサルバドルでのパレード

利用者さんについて

首都内は自動車が多く、交通渋滞していることが多いですが、自動車を所持している家庭は裕福な家族に限られ、多くの利用者はバス、タクシーを利用しています。

遠方から通う場合は、バス停までの歩きや乗り換えなどでリハに往復1日かかることから、交通費や労働時間短縮により生活が厳しく継続が困難になる場合も多いです。

また雨の日は、交通面の状況で外来リハビリに来れなくなる場合も多いです。

利用者の家族状況は、若い年齢の母親、父親がいない、両親が仕事や出稼ぎに出ているなどで、両親以外に、叔父母祖父母、または近所の人が、お子さんの面倒を見ているなどの家庭も少なくありません。日中は家族が働きに出ているのでお手伝いさんが面倒をみている家庭も多いです。

そして日々、日本と比較して人と人との距離が近く、愛情が溢れていると感じます。さすがラテン、知らない人にも、オラ―コモエスタ?と陽気に声をかけ、挨拶の基本はハグ。リハ中もセラピストが子供にハグをする愛情表現がみられます。

セラピー終了時には小さな子供も挨拶でほっぺにキスや投げキスをしてくれ、とても可愛らしいです。

疾患名としては、脳性麻痺、ダウン症、二分脊椎、水頭症、小頭症など日本と大きく変わることはありません。しかし、今年は、ジカ熱の流行の影響で小頭症のお子さんが多く外来受診に来ています。

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こちらで使われているポルタベベという赤ちゃん椅子にクッションを詰めて適正な姿勢の評価をしています。

国内には保育器のある病院があり、年々、未熟児の赤ちゃんの命が助かる数が増えています。それに伴い、当外来リハに受診する赤ちゃんが年々増えています。2013年から現在までの3年間で、当外来リハに未熟児と診断がついてくる新規登録利用者数は約三倍です。

またPT部門以外には自閉症のお子さんも多く、特別支援学校教諭がセラピーを行っています。

外来リハに来ている小頭症のアリアナ。最近は声を出したり、笑ったりするようになりました。

外来リハに来ている小頭症のアリアナ。最近は声を出したり、笑ったりするようになりました。

利用者の社会参加について

組織内の、広報部の職員が積極的にFacebookなどに情報を載せ、障害を持つ方たちに対する偏見をなくすことや、どのように機構が働いているのかを情報提供しています。

また、配属先内では、子供のためのお祭りや運動会などの年間イベントもすでにあり、子供や家族、そして職員もそのお祭りを楽しんでいます。

配属先のイベントで子供たちが演奏隊の後ろを歩く様子

配属先のイベントで子供たちが演奏隊の後ろを歩く様子

これらは、とても重要なことだと思います。

しかし、小さな国エルサルバドルですが、首都と、他の地域との貧富の格差の問題は尽きません。

先輩隊員と地域の利用者さんの生活の様子を確認すると田舎は道も整備されておらず、車椅子があったとしても外に出れないこと、首都に出るための交通手段がないこと、地域の学校の先生や障害を持った方と関わり方を知らないなど、課題は多くあると感じています。

首都から離れた地域で暮らすお子さんの家までの道。

首都から離れた地域で暮らすお子さんの家までの道。

スペイン語という言葉の壁はまだまだ厚いですが日々、同僚やホストファミリーなど現地の方たちに助けられ、活動しています。

残りの任期では、お世話になっている同僚・他職種とともに、継続が難しくなる可能性のある利用者や配属先に来ることができない利用者・家族に対し、どのようなことを行い、どのようなことを工夫すると生活、社会参加を促すことができるのかを一緒に考えていきたいと思っています。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
それでは、また会える日まで!アスタプロント!

執筆者:勝股歩美 理学療法士

2008年3月     帝京平成大学専門学校卒業、理学療法士免許取得
2008~2015年9月  聖母療育園 勤務
2016年1月     青年海外協力隊 27年度3次隊でエルサルバドルに派遣中
           (現職参加)

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