リハレポ165号 途上国へ来る前に勉強しておけば良かったことは? タンザニア辰巳PT

Mambo?(マンボ) 元気? こんにちは。タンザニアから理学療法士の辰巳がお届けいたします。

場所が変われば、それぞれ違った多くの発見と驚きがあります。そしてそれは、医療の現場においても同様であり、ここタンザニアでもまた意外なニーズに驚かされています。私がタンザニアでの理学療法診療に携わるにあたり、特に必要とされたのは、日本でのコメディカルとしての診療補助の枠組みを越えた「多岐に渡った病態の知識」でした。

私はタンザニアの中心に位置するドドマ州の州立病院・理学療法科で、主に理学療法診療の支援を行っています。日本では機能訓練と在宅医療を主体に働いていましたが、タンザニアでは「診断」も大切な業務の一貫です。ここでは、画像検査をはじめとした検査機器の物質的不足だけでなく、検査や手術自体の技術もまだまだ充分とは言い難い状況で、現地の医師では対応が困難な症例のフォロー先として理学療法科にオーダーが来るケースも少なく無くありません。

医師にかかったものの、原因不明のままで「身体が動かない/歩けないから理学療法科へ受診」といったケースや、医師から「手術は終わったから、後は理学療法科で対応」や「血圧のコントロールがうまくいかないから意見が欲しい。方針は理学療法科に一任」などの依頼を受けるケースも少なくなく、こちらで考えつく必要な検査項目を挙げて、処方を出すといった事も理学療法科では日常的に行います。

その為、問診と身体所見から総合診療の役割を担い、必要に応じて血液検査の指示、薬やレントゲンの処方、術後経過の観察、必要な診療科への再受診の促しを理学療法科が行います。さらに、熱傷(火傷)や術創部の処置と管理なども関与せざる得ない場合もあり、感染症対策の知識も必要です。なかには数ヶ月前の術創部から膿汁を流しながら、痛みが収まらないと理学療法科に頼ってくる患者も居ます。

さらに、病態把握を難しくする要因として、ウィッチドクターが関わってくる事もあります。まじないや伝統治療、伝統薬がそうです。中でも衝撃的だったのは大腿部の疼痛を訴えて当科を受診された症例でした。「2ヶ月前に転倒し、痛みがひかない」と来院し、大腿部が腫れあがり、触れるだけで痛みを訴えます。レントゲン写真を見ても骨や関節に特筆した異常はありません。私の知識では、原因を探っても検討がつきませんでした。皮膚科か?それとも内科か?フォロー先を考えていた時です。そこへ同僚が協力に来てくれ、私の思考に文化的な要素が漏れている事に気付かせてくれました。さらに問診を続けた結果、この症例は転倒した(骨折には至らなかった)後、打撲痛が長引いたようで、その状態を案じた家族が、伝統的な治療として定期的に痛みのある部位に熱湯をかけていたというものでした。その場で、同僚と共に病態説明と患部の管理方法の指導を行い、事なきを得ました。

このように、日々の診療を通し、機能訓練の知識だけでなく、総合的に病態を捉える能力が重要になっており、日々悪戦苦闘しています。その為、基礎医学、病態生理学、そして他科の医師と議論するための語学力と医学英語の知識の重要性を日々強く感じています。これらの知識は日々の積み重ねが必要で、一朝一夕で身に付くものではありません。なのので、現場にいながらも辞書を引いたり、教科書を開いたり、文献検索したりと毎日おかしな動きをしながら立ち回っています。

正直、日本では対応しない範囲までに守備範囲を広げる事は容易ではありませんでしたが、調べ、問いかけ、議論し、現地スタッフを巻き込みながら、日々の患者診療に臨んでいます。特に語学は助けて貰ってばかりです。

まだまだ充分にはほど遠い状態で、おかしな動きだけどなんだか熱心な外国人状態ですが、出来るだけたくさんの患者さんが「この病院に来て良かった」と思える治療を受けられるように、残りの期間も日々精進して行きたいと思います。

それでは、少し長くなりましたので、今日はこの辺でTutaonana(とぅたおなな)!

またお会いしましょう。

165タンザニア辰巳② 165タンザニア辰巳

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