タイに進出したクリニックで勤務する理学療法士
群馬県の医療法人石井会は、2017年4月にタイに Japan Rehabilitation Center Ishii Life Support Physiotherapy Clinic を開設をしました。石井会に所属し、タイの理学療法クリニックに出向している理学療法士の神庭さんにお話を伺いました。
現在の業務内容
バンコクの理学療法クリニックにて、タイ人理学療法士にリハビリテーションについての指導をしています。
具体的にはクリニックの顧客の評価を私が実施し、問題点をタイ人理学療法士と共有、治療プログラムを立案し、タイ人理学療法士が理学療法治療を実施します。その後、問題点の考察をタイ人理学療法士と共有します。
治療時間以外は、運動学、解剖生理学、触察、病理学についての資料を作成した上でタイ人理学療法士と勉強をしています。
また、営業活動のため、広告デザイン、クリニック外で測定会などのイベントの実施、リハビリテーション関連商品の販売促進活動なども行っています。
クリニックの概要について
母体は日本の医療法人であり、2017年より営業開始しております。高層ビルが立ち並ぶバンコク、サトーンのオフィス街より車で5分程度の場所に位置しており、クリニック周囲は商業施設や学校、住宅がある静かな場所です。
こちらタイでは理学療法士が開業権を保有するため、医師不在でも営業可能です。
クリニック顧客はおおよそタイ人6割 諸外国人3割 日本人1割で、頸部痛や腰痛など慢性の整形外科疾患が多いです。その他、神経難病や脳卒中後の方がいらっしゃいます。年齢層は40-60歳です。
クリニック徒歩圏内に電車の駅がないので、お客様は自家用車かタクシーで通って来られます。
タイ人理学療法士と働くことについて
一緒に勤務する上で気をつけていることが3つあります。1つ目は「自分の言葉で自分の口から伝えること」2つ目は「日本ではこうだと言わないこと」3つ目は「予め正解を伝えること」です。
現在、現地の理学療法士とはタイ語でやり取りしています。赴任当初、わたしは現地の言葉が話せないにもかかわらず、自分の任務は「日本式の理学療法をタイ人理学療法士に覚えてもらうこと。タイ人理学療法士はわたしについて来てくれるはず。」と疑いませんでした。彼らは拙いタイ語と英語で外国人から指示を受けることに相当なストレスを感じていたと思います。当時の罪悪感や自己嫌悪感は忘れられず、現在言語習得や伝え方に工夫を凝らすことの原動力となっています。
タイ人はシリアスな雰囲気や、怒られることを嫌うといいますが、何でも容認していいという訳ではありません。まずはわたしがタイの文化やスタッフの気質を理解した上で「具体的にこういう理由で、こうして欲しい。」と自分の口から伝えることで、信頼関係が生まれると信じています。
タイの理学療法士について
首都バンコクの私立病院ではある程度理学療法士数は保たれていますが、まだまだ理学療法士数は不足しているため、タイで理学療法というと物理療法を駆使するイメージが強いです。
理学療法の養成校では物理療法よりも運動療法が有用と教えられているようですが、なかなか臨床に活かされない現実です。タイの理学療法士で、勉強熱心な方は国外留学したり、自分でどんどん起業したりと、わたしたち日本人理学療法士が見習うべき部分も多く持っています。
プロフィール
神庭悠子:理学療法士。群馬県の医療法人石井会にて5年間急性期から維持期の入院・外来リハビリテーションに携わる。2017年1月にクリニック開設に向け、バンコクに出向。