理学療法士のイギリス留学後のキャリアパス!JICAジュニア専門員までの道

石川県で3年間理学療法士として勤務後、ガーナで青年海外協力隊理学療法士として2年5か月活動しました。

その後、三重県での半年間の総合病院勤務を経て、2015年9月から2016年9月までイギリスのリーズ大学社会科学社会政策学、修士課程障害と開発コースに在籍していました。

イギリス

ウィットビーの街並み

 

障害概念の理論形成、世界における貧困と格差問題を基本に、特に開発途上国における障害と課題について学びました。

修士研究として、ガーナの地方にある職業訓練学校と身体障害者に関する質的調査を行いました。

理学療法士イギリス留学

ガーナでのフィールド調査。職業訓練校の卒業生。

現在は国際協力機構(以下JICA)に、社会保障分野のジュニア専門員として勤務しています。

留学中に考えたキャリアパス

イギリスの修士課程は一年と短く研究と就職活動を並行して行うには計画性が必要です。

留学を決める前から、国際協力の分野で働きたいと考えていましたが、具体的な就職先は決まっていませんでした。

留学を通して国際協力の様々なアクターとその特徴を知り、また開発学のクラスでは世界各国の開発援助実務経験のある友人に恵まれました。

さらに、イギリスで開発学を学ぶ日本人留学生による勉強会、Intercollegiate Development Discussion Panel (IDDP)*1 にも積極的に参加し情報収集と発信、ネットワーク構築を行いました。

これらを通して、どのようなアクターとして国際協力に携わっていきたいのかより具体的にイメージがつくようになっていきました。

1.) 国連機関

国連機関への登竜門として国連JPO試験*2や国連事務局YPP*3が挙げられます。

どちらも日本人が国連機関で働くための大きなステップです。

国連機関で働くには各機関で随時募集されているポジションに応募することになりますが、これは非常に競争率が高いとされています。

JPOやYPPは国連機関における日本人採用を進めるための制度であり、各自で直接国連機関の仕事に応募するよりは競争率が低いとされています。

とは言っても、競争率は高く、目指すにはさらに数年対策を重る必要があると感じました。

2.) NGO

Save the Children やWorld Visionといった国際NGOで実際に働いている方とお会いし、お話を伺いました。

NGOは草の根で活動ができるイメージですが、各団体の理念が明確であり、自分に合った団体を選ぶ事が重要となってくると感じました。

今は国際協力に対する自分の信念を形成している段階だと考えたので、NGOでの勤務はもう少し先の選択肢だと判断しました。

3.) 日本の医療・社会福祉現場への復職

日本国内で国際協力への関心・視野をもつ医療・福祉機関への就職も考えました。

特に、東京都の北原国際病院、石川県金沢QOL支援センター、石川県佛子園に興味を惹かれました。

ホームページで理念や採用案内を確認しましたが、イギリス在住であることから、即時応募(審査)が困難でした。

遠い将来、日本の医療・福祉の場で国際協力を行う事も視野に入れていますが、現段階では開発途上国の現場で働きたいという思いが強く、この選択肢を除外しました。

4.) 国際協力機構JICA

JICAでは様々な援助スキームの下、草の根レベルから政策レベルと国際協力に幅広く携わります。

また、開発途上国への援助に加え、日本国内において、開発に関する啓発と国際協力の推進も行います。

これらの点から、自分の経験と専門性が適合し、かつやりたい事ができる、JICAで働きたいと思うようになりました。

JICAの中にも多種多様な職務があります。募集があったポジションの中から、私の専門性とやりたい事に適したものを選んだ結果、企画調査員(ボランティア事業)とジュニア専門員が考えられました。

企画調査員(ボランティア事業)は開発途上国の各JICA事務所にて青年海外協力隊の活動を支援する仕事です。

特徴は、青年海外協力隊員の活動と安全を支援し、「国際協力の表舞台」にたつ隊員を通して相手国を支援するという点です。

元々、人を陰から支える事が好きであった事、また最短で開発途上国の現場に戻れるという理由から当初はこの職種への応募を一番に考えていました。

同時に、社会保障分野のジュニア専門員という職種の募集もありました。

ジュニア専門員制度とは、開発課題に対する専門知識と実践的な課題解決能力を習得し、将来的に国際協力に従事する人材を育成するための制度です*4。

およそ一年半における研修と業務後、長期専門家として開発途上国へ派遣される事になっています。

前年度に同部署で勤務され、現在は長期専門家として活躍されている方と密にやりとりをし、社会保障分野の開発課題を草の根から政策レベルまで幅広く見ることができる魅力を知りました。

さらにJICAという組織に所属することで、国際協力に関する幅広い職種・有識者の方と一緒に仕事をさせて頂く機会が多い点も、今後国際協力の分野で働く上で役立つのではないかと考えました。

決め手となった点

上記のようにたくさんの候補がありましたが、最終的に、

① 大学院修了後すぐに働きたい
② 開発途上国の現場で働きたい
③ 開発援助に関して草の根活動レベルから政治・政策レベルと幅広い知識と経験を積みたい
④ 募集のタイミング

という4点が合致するJICAのジュニア専門員への応募を決めました。

キャリアパスを形成する際に

最後に私の経験からキャリアパスを形成する上で重要だと思う点を以下に挙げます。

① おおまかなビジョンを早めに早めに。
どういった分野でどのような事をしたいのかをイメージし、1つ2つ先のステップを考えておくと、チャンスをタイミングよく掴むことができます。

② たくさんの人と繋がりを。読む→聞く→話す。
おおまかなビジョンを基に、様々な職種の人々と交流し、情報交換をしてください。調べて読んで、話を聞いて、さらに自分の考えを話すことで、次のステップが大きく開けます。

③ 資金管理。
単純に、手元に生活できるお金があるかどうかは次のステップを決める大きな要素です。何かに挑戦するにはお金が必要、というのが(悲しいかな)現実でした。

イギリス

リーズの街並み

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ガーナの職業訓練校を卒業した後に開いた靴屋の看板

参考

*1: IDDP 英国開発学勉強会
*2:外務省 国際機関人事センター JPO派遣制度 
*3: 外務省 国際機関人事センター 国連事務局ヤング・プロフェッショナル・プログラム(YPP)への応募案内
*4:国際協力機構 ジュニア専門員とは 

執筆者:米田裕香 国際協力機構(JICA)人間開発部 高等教育・社会保障グループ 社会保障チーム ジュニア専門員

経歴:青年海外協力隊員理学療法士としてガーナへ派遣。任期終了後にイギリスリーズ大学院(障害と開発コース)へ留学。

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